「信じなければ、走る意味がない」——残り1300mの夢
この日の逃げは3人。ベルギーの若手スロック、フランスのゲルナレック、そして前日に続いて2日連続で逃げに乗ったチェコのオトルバです。集団が許したリードは最大2分15秒——数字の上では絶望的な逃げでした。それでもスロックはドンムとビュイソン=ド=カドゥアンの山岳ポイントを先頭で越え、中間スプリントの20点も総取り。仲間が力尽きた後は約40kmをたった一人で走り続け、吸収されたのはゴールまで残り僅か1.3km。「信じなければ、走る意味がない」——敢闘賞を受けた25歳の言葉が、この日の全てでした。
初心者向けメモ: なぜ集団はギリギリまで泳がせるのか
スプリンターを抱えるチームは、逃げとの差を計算しながら「ゴール直前に捕まえる」ことを狙います。早く捕まえすぎると別の選手の飛び出し(カウンターアタック)を誘発してしまうため、残り数kmまであえて泳がせるのが定石です。ただしこの計算はときどき狂います——この日の残り1.3kmは、集団側からすれば「計算通り」、スロック側からすれば「あと1分だけ脚が残っていれば」という、紙一重の攻防でした。